フランス3日目の夜と、おまけ

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テタンジェの後は、ホテルに戻ってシャンパーニュ最後の夜を過ごします。

 

その日のメニューをシェフから聞いて、黒板に書くナタリー。

アンボネイのブー・デュ・クロ、ブラン・ド・ノワールでスタートします。
部屋のプレートと同じスタイルのエチケット。

 

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フォアグラとセップ、温泉たまご。

セップの存在が、シャンパーニュとの良い繋ぎになってくれています。

 

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カジキマグロとアボカド、かぼちゃ。
野菜がすごく美味しいです。

 

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クラマンのシュマン・ド・シャロン、ブラン・ド・ブランです。

いい色♪

 

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この日のメインは牛肉でした。

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デザートの時にナタリーが来て、明日アンセロム・セロスが帰ってくるからタイミングが合えば会えるかも、とこっそり教えてくれました。

イタリアから帰ってきて、すぐに韓国に発つそうです。
その隙間に立ち寄るから、と。
私たちもチェックアウトをして、10時にアポを取っている訪問先に行かねばなりません。時間はあるのか?

Kちゃんは強運の持ち主なので、そこは運を天に任せることにしました。

 

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翌朝、朝食までの時間に外へ出て写真を撮ったりしていると、醸造チームが出勤してきました。

 

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ということは、と思ってレストランへ行くと、フロントの方へ歩いていくアンセロム・セロスの後ろ姿を見つけました!

姿を見つけたからにはKちゃんと作戦会議です。

チェックアウトをして向かう10時のアポは絶対に遅刻ができません。
9時から9時半の間しか、私たちには時間がない。

部屋へ戻って大急ぎでパッキングを済ませ、
再度レストランに戻り、ナタリーに相談をしました。
受付のスタッフマリーが9時に出勤してくるから、マリーに頼んでみたら協力してくれるよ!と応援してくれたので、フロントでマリーを待つことに。

 

なんと、そこにアンセロムさんが通りがかったので、
Kちゃんが、お忙しいところすみませんがあなたのカーヴを見せて欲しいのですと、丁寧に丁寧にお願いすると、
彼は「いいよ、じゃあスタッフに指示してくるからここで待ってて。すぐに戻るから」と即答してくれました。

Kちゃんはやっぱり強運の持ち主でした。
感謝しかありません、本当にありがとう。

 

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ここは元々ドメーヌだったところを購入されたそうで、天井の穴からコウモリが入ってきてコバエを取ってくれるそうです。

たくさんのお話を聞くことができました。

 

ブドウの木にとても愛情を注いでいるので、生産量を増やすことができない。
私たちはひとつひとつのブドウの木に手をかけてブドウを生まれさせる、助産婦だ。

3つの大切なこと「ひとつめは、ワインの音を聞くこと。ふたつ目は、香りを嗅ぐこと。3つめは口に含むこと」

90年代に無農薬を始めて、96年にビオディナミ農法にトライした。そして2003年に、それをやめた。無農薬に縛られてしまう。
土を育てる仕事は文化とは違い、正解はない。マニュアルもない。こうしないといけないとかは、ない。
「こうしないといけない」ということに縛られたくない。それに縛られると、ワインの声が聞けなくなってしまう。

 

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2000年初期に四国に行って福岡正信にタオイズムを聞きに行った。彼は農民で、農学者であったけれど、タオの哲学を持っていたと私は信じている。タオ方式というのは、何故これをするのか、その理由がわからなければやらないという考え方。赤ちゃんや子供にそんなことをしたら、ルールに反する。なぜこれをしているのかがわからない限り、私はそれをやらない。ブドウと親密にならなければいけない。

 

ブドウという生き物を扱っているから、正解がない。
日本にはこれまで3回行った。
興味を持ったのは、いろんな発酵方法があるから。味噌、醤油、酢、麹。日本でどういう風にしているのか、学んで取り入れたいと思った。発酵過程で出てくる物質を味見するのが好き。
コピーするのではなく、そこからヒントを得ている。理解すること、行って調べることこそが重要だと考えている。

 

そして最後に私の不躾な質問に対して丁寧に答えてくれました。

「10年くらい前にあなたのシャンパーニュを飲んだ時に、その美味しさがまだ未熟な私にはわかりませんでした。それからの10年間、私はたくさんの勉強をして、ワインもシャンパーニュもたくさん飲んできました。そして一昨日と昨日と、あなたのシャンパーニュを飲んだ時、美味しいと感じました。美味しさを理解するためには、やはり訓練は必要なのでしょうか。」

 

なごり。
自分が造ったものは失敗かもしれない。その失敗とはチャーミングポイントだと思って欲しい。
あれ?と思わせることをやっている。この味なんだろう?と、人がそれを何年も覚えているように考えて造っている。
日本人は失敗の中から何か良いことを見つける、探す。日本人の哲学、わびさび、そこからインスピレーションを得ています。

 

心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

 

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お礼とさよならを言ってホテルに戻り、「会えた!会えた!」興奮しながら報告する私たちを「よかったね、よかったね」とマリーが一緒に喜んでくれました。「彼は本当に日本のフィロゾフィーに興味があるのよ」と。

そして、レストランにお礼を言いに行ったらナタリーも一緒に喜んでくれて、お別れの挨拶には大きく手を振ってくれました。

 

結局は「人」の温かかさが一番でした。
スタッフをとても大事にされているからスタッフも皆感じが良いのだと、Kちゃんとの結論に至りました。
どのスタッフも皆にっこり笑顔で挨拶してくれる、最高のホテルでした。