最近、ありがたいことに大好きなドゥラモットをいただく機会が多くて、しみじみとその美味しさに浸っています。
シャンパーニュのカリスマ的存在「サロン」の姉妹メゾンという印象が強いドゥラモット。
だけれどもブドウの調達はそれぞれ独立しているらしいので、もはや姉妹の存在ではなく独り立ちした立派なメゾンだといえます。
サロンはデゴルジュマンまで10年間寝かされており、瓶詰後は50年以上は持つと言われていて、孫と一緒に楽しめるシャンパーニュです。
ドゥラモットは、ブリュットは6年以内くらいに飲んだ方がよく、ブラン・ド・ブランNVは、出荷までに4年寝かされていて、すぐ飲んでも美味しいですがあと2年くらいは寝かしておいた方が美味しい。そしてミレジメは少なくとも6年間寝かせてから出荷されるのですが、この後20年間くらいは美味しい状態を保つと、ディディエ・ドゥポン社長はインタビューでお答えされています。
そしてドゥラモットには、幻のシャンパーニュと言われる「アラン・ロベール」のブドウが使われているそうで、それを聞いてしまった今はもう、ドゥラモットの魅力に取りつかれっぱなしです。
ついこの前、1999年のドゥラモットをまだ日が明るいうちからいただきました。
泡がやわらかくなっていて、ふわっとした口当たりに、熟成感が感じられる味わいです。
果実味は儚く、でも余韻は長く続く優しいシャンパーニュでした。
アラン・ロベールは口にしたことがないけれど、こんな感じの味なのかなぁと、伝説のシャンパーニュに思いを馳せました。そんなひとときも、楽しめる幸せ。そして同時に、この時間が永遠ではない切なさも抱きます。
このブドウが収穫された1999年に、私は何をしていたのだろう。
ワインやシャンパーニュのヴィンテージを見つめ、過去を反芻するのもひとつの楽しさです。
1999年は私にとって、母を亡くした悲しい年でした。そういえば。
まだ52歳でしたが、癌が見つかったときは末期で、手の施しようがないとお医者さんに言われ、
本当の意味での絶望に、人生で初めて出会った瞬間だったと思います。
娘は生まれたばかりで、これから母にはたくさんのことを教えてもらうつもりでした。
授乳の合間に自転車で病院に駆けつけ、少し話をしてまた自転車を飛ばして娘のもとへ戻る。
これを3か月間繰り返したのち、お別れの日を迎えました。
モルヒネを増やし眠っている時間が増えていった母の最後の1ヵ月間は、私の中にあまり記憶がありません。
自転車で向かうときに、転んで足から血を流して病院に行ったとき、
母に言われました。「信号ひとつくらい逃しても、そんなに変わらないから焦らないでいい」と。
でも私には、残り少ない母との時間を1分1秒たりとも逃したくない気持ちしかなかったのです。
それは声には出せなかったけど。
あら。過去を楽しく反芻するつもりが、悲しい話になってしまいました。
健康で、いつまでも美味しいワインやシャンパーニュを味わうために、
身体のケアは怠らず、日々を過ごしていきたいものです。
そしてドゥラモットは、スタンダードなものからミレジメまで、私が愛してやまない大好きなシャンパーニュです。
ドゥラモットらしい柔らかい味わいは、楽しいときも悲しいときも、寄り添って癒してくれると思います。